2009-11-08

『勤勉だけが取り柄なら蟻と変わるところがない。なんのためにせっせと働くかが問題だ。』(ヘンリーデビッドソロー)

日ごろの不摂生が災いして風邪引いたっぽいwwwwwwwwww


ところで、今ゼミの発表で障害者福祉っていうテーマを扱っているんですが、ちょっとええ話を思い出したので記しておきます。
皆様は日本理化学工業という会社をご存知でしょうか。
ダストレスチョークの工場を経営する会社で国内シェアトップという小さな会社です。
しかしながら、そこには他の企業とは違った大きな特徴があります。
それは、従業員の大半が障害者であるということです。
以下は、現在日本理化学工業の会長をなさっている大山泰弘氏の東洋経済に掲載された連載記事の引用です。


大山泰弘 その1【全4回】 社員の7割が知的障害者、人は働いて幸せを知る - 09/01/16 | 22:00



私が会長をしている日本理化学工業は、チョークを製造する従業員74人の会社です。昭和12(1937)年に父親が創業しました。川崎と北海道・美唄(びばい)に工場がある、ありふれた中小企業ではありますが、よそにはない特徴があります。それは従業員のうち55人が知的障害者だということです。

うちの会社では知的障害者も生産ラインで一人前の労働力として働いています。障害者に作業方法を教え込もうとするのでなく、障害者の能力に合わせて作業環境を改善すれば彼らも立派に働いてくれます。チョークという小さな市場ですが、日本理化学は国内シェアが3割あって、業界トップを維持しています。

障害者を雇うようになったのはまったくの偶然です。今から49年前、当時は東京・大田区に工場がありましたが、近くの養護学校の女の先生が訪ねてきました。中等部を卒業する2人の女生徒を受け入れてもらえないかという依頼でした。その先生は「子どもたちは、このままでは働くことを知らずに一生を終えることになります。何とか雇ってもらえないでしょうか」とおっしゃいます。

しかし私自身、福祉や障害者のことなど何も知りません。「お気持ちはわかりますが……」とお断りしました。が、何度も訪ねていらっしゃいます。子どもたちの境遇と先生の熱心さに打たれ根負けするような形で、1週間の実習だけならと、受け入れたのがきっかけです。ちなみにその2人は正社員として入社し定年まで勤めてくれました。

障害者を雇うようになって数年経っても、彼らがなぜ喜んで工場に通ってくるのか、私は不思議でなりませんでした。工場で働くよりも施設で暮らしたほうが幸せではないかと思っていました。言うことを聞かないため「施設に帰すよ」と言うと、泣きながら嫌がる障害者の気持ちがわかりませんでした。

そんなとき、ある法事で禅寺のお坊さんと席が隣合わせになり、その疑問をぶつけたことがありました。するとそのお坊さんは即座に
「幸せとは、1.人に愛されること、2.人に褒められること、3.人の役に立つこと、4.人に必要とされることです。愛はともかく、あとの三つは仕事で得られることですよ」とおっしゃったのです。私はその言葉に深く納得しました。

働くことは自分のためであるが人のためでもある。企業が利益を追求するのは当然ですが、同時に社員が幸せを求める場でもあると考えるようになりました。



大山泰弘 その2【全4回】 作業を人間に合わせれば知的障害者でも働ける - 09/01/23 | 22:00



49年前、知的障害者の受け入れを始めたのはほんの偶然でしたが、健常者・障害者を問わず、働けることは幸せなことであり、その幸せを与える場が企業なのだと考えるようになった私は、障害者雇用にこれまで以上に積極的になりました。1975年には川崎工場が、「心身障害者多数雇用モデル工場」の認定第1号となりました。

知的障害者が働ける環境にするためには、さまざまな工夫が必要です。たとえば無理な姿勢をとらせないとか、危険な作業をなるべく減らすというのは当然ですが、これは健常者であっても必要なことです。

知的障害者の多くは、はかりの目盛りを読み取れません。しかし、てんびんばかりを使うようにして、必要な分量と同じ重さの重りを用意して、重りと容器に色を塗り、「青の容器の材料は、青い重りで量って混ぜる」といったことを決めておけば、彼らにもできます。この色分けのアイデアは、彼らが信号を守りながら一人で通勤してくることに気づいてひらめきました。信号がわかるということは色を識別できるということですから。

時計が読めなくても、このスイッチを入れたら砂時計を引っくり返して、砂が落ち終わったらスイッチを切るんだよと教えれば、きちんとできます。

一人ひとりと付き合いながら、何ができて何ができないかを少しずつ理解して、工程を改良する。そうやって知的障害者とともにやってきました。それは振り返ってみれば、人間の能力の発見ともいえる作業でした。

人が生きている以上、能力がゼロということはありません。人間を工程に合わせるのではなく、工程を人間に合わせるという発想が大事です。確かに健常者が1時間に1000個組み立てられるものが、知的障害者は100個しかできないかもしれません。でも作業を切り分け、得意な工程に特化すれば、5人で5000個できるかもしれない。生産工程は、細分化・単純化が進んでいるだけに、改良の余地があります。要は能力を生かす工夫をしているかどうかです。

知的障害者であっても、皆それぞれ頭の中で情報処理をしています。理解できるように指示をするようにしたり、工程を変えたりしてみる。そうすれば彼らも一人前の戦力になります。私の会社でもできているんですから、優秀な日本の経営者が知恵を出し合えば、もっと障害者を雇うことができるはずです。


大山泰弘 その3【全4回】 人は褒められて育つ 障害者も健常者も同じ - 09/01/30 | 22:00



日本理化学工業では55人の知的障害者が働いていますが、採用に当たっては条件があります。それは、(1)食事や排せつも含めて自分のことは自分でできる、(2)簡単でもいいから意思表示ができる、(3)一生懸命に仕事をする、(4)周りの人に迷惑をかけない――というものです。これは入社時の約束でもあります。

もし周りに迷惑をかけるようなことがあれば、就業時間中であってもすぐに自宅や施設に帰します。親御さんには、「もしお子さんが反省して四つの約束を守って働き続けたいと望むならば、すぐに連絡をください」と伝えます。大概は何日もしないうちに親御さんから電話があって、再び元のように通ってくるようになります。彼らも家や施設にいても楽しくないのでしょう。ここに来れば一緒に働く仲間がいます。

もちろん知的障害者はそれぞれ個人差が大きく、簡単にはいかないこともあります。周りと協調できず、奇声を発したり多動を示したりといった行動障害に直面します。実際、しょっちゅう問題を起こす子もいました。でも社員には、「もし行動障害が毎週あるなら辞めてもらうことも考える。でもそれが2週間に1回、3週間に1回になっていくなら、本人が成長したと思うようにしよう」と言ってきました。ずっとそんなことの繰り返し。そうやってよくなった子が何人もいます。

仕事でうまくいって褒められたときや、「君が来てくれたから今日はこの仕事が進むんだ、ありがとね」と言われたときの心地よさ。そうしたときのうれしさは知的障害者も健常者も変わりません。彼らも働くことを通じて我慢することを覚えていくんだと思います。

それだけに一人ひとりの発達に応じて、作業内容や職場環境を考えることが必要になります。そうしたきめ細かい対応は、むしろ大企業より中小企業のほうが可能かもしれません。

障害者雇用は、健常者の従業員の意識も変えました。初めのうちは面倒を見ようという気持ちが強かったのですが、障害者の熱心な働きぶりや成長を見るにつれ、自分たちもしっかりやろうという気持ちになっていきました。何より私自身が彼らに出会ったことでさまざまなことを学びました。

日本理化学は小さな会社ですが、従業員には社会に貢献しているんだ、弱者の役に立っているんだという自負があります。そうした誇りが、従業員のモチベーションの向上にもつながっていると思います。



大山泰弘 その4【全4回】 障害者雇用を増やすには企業が主体になるべき - 09/02/06 | 22:00



チョークという一見、単純そうな製品ですが、日本理化学では研究開発に力を入れてきました。少子化によってチョーク市場も縮小が続いています。それだけにこれまでの製品に安住せず、新しいことに積極的に取り組んでいます。

その一つが、ホタテの貝殻を混ぜた環境に優しいチョークです。ホタテ養殖でゴミとして処分に困っている貝殻を使ったものです。これも単に混ぜればいいわけではない。書き味と見やすさを両立させるために、北海道の工業試験場と一緒に工夫を重ねました。

「キットパス」という新製品は、ホワイトボードだけでなく、ガラスにも書いて消せるマーカーです。これは従来のマーカーのようにインクではなく、口紅と同じパラフィンを原料にしたもので、粉の出ないのが特徴です。これまで手薄だった医療現場や一般企業向けに販路が広がるのではと期待しています。

日本では障害者雇用がなかなか進みません。企業や官公庁は法律によって一定割合の障害者を雇わなければなりませんが、多くの企業は未達成で、国に納付金を支払ってお茶を濁しています。障害者を雇うより納付金のほうが安くつくので、安易にそちらを選んでしまっています。

知的障害者が養護学校を出た後、福祉作業所で働いた場合、補助金や職員の人件費などで、生涯2億円の経費がかかるそうです。障害者であっても企業が作業者に配慮をしたり、職業訓練を行ったりすることで、一般の企業でも働けるようになります。私のところでは、知的障害者に最低賃金法に定める賃金を払っていて給与は12万~13万円になります。福祉作業所の平均賃金は1万円程度ですから、大きな違いがあります。

本来、働く場を提供するのは、企業の役割です。経営の素人である福祉関係者が作業所を運営するより、企業経営者が障害者を雇ったほうがさまざまな点で適切なはずです。障害者であっても労働の分野は企業が主体になるべきです。私流に言えば「働くことの幸せ」を、余計な費用をかけて福祉が担当しているほうがおかしいのです。これは行政自らが改革すべきです。

企業からの賃金と障害者年金を足した金額が、最低賃金を超えていればよいと法改正をすれば、企業の負担もずっと軽くなって、障害者雇用はもっと進むはずです。働ける障害者は企業で働いたほうが、彼らもずっと幸せなのです。社会全体の費用からいっても、ぜひとも導入してもらいたいと考えています。


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